めんどくせぇことばかり 『国道食堂』 小路幸也
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『国道食堂』 小路幸也

ニュースを見れば、訳の分からない犯罪に手を染める輩が後を絶たない。

最近は、恥ずかしい犯罪が目につくような気がする。そんなニュースを知ると、「こんなことをやって・・・。その時、家族の顔を思い浮かべなかったんかな」と、私は思ってしまう。そして、つくづく思う。「ああ、今はもう、家族が歯止めになる時代じゃなくなったんだ」って。

頭のいい人たち(大変語弊のある言い方だけど、これでお分かり下さい)が、戦後の日本をそう作りかえたんだ。自分たちがのびのびと生きられるようにと。だけどそれは、生活にゆとりがあればこそのことで、そうでない者にとっては、孤立無援で暗闇に立っているようなもの。

それを鵜の目鷹の目で狙ってる輩は多いだろうけど、腹をへらした困ったときに、“国道食堂”にたどりつけるのはわずか。

犯罪に走る輩の多くが、“無職”と報道される。それでも大半の奴は、そこで一踏ん張りするんだ。その時、家族とか、親戚とか、仕事仲間とか、そういうしがらみを持っている奴は、その踏ん張りが効くんだ。それがない奴ほど、越えちゃいけない境界線を、たやすく越えて行ってしまう。

日本に入ってくる外国人労働者を増やしてはいけないという意見の根拠として、外国人による犯罪が増えるという話があった。そういう奴もいるだろう。実際、外国人による犯罪も起こっている。

だけど、しっかり仕事をしている外国人が犯罪を起こしているわけじゃない。その多くは、不法入国、不法滞在外国人。犯罪を犯せば送り返されちゃうんだから、日本に仕事をしに来て犯罪に走るのはまずいない。目的を持ってるから我慢も効く。一生懸命やるから能力も上がる。のほほんとしてりゃ、日本人が外国人に使われるようになる。

外国人にしろ日本人にしろ、犯罪に手を染めるのは、仕事のない奴だ。実は仕事っていうのは、面白い仕事がいくらでもあるんだけど、それが世の中に知られていない場合が多い。そういう意味合いで、職業教育って本当に大事だと思う。

英語教育に血道をあげるより、そっちの方がよっぽど大事だと思う。

賑やかな町を離れ、国道沿いにある通称「国道食堂」。

ドライブインというより、大衆食堂という感じだからか、そう呼ばれている。おまけに、店の中には、リングがある。そう、プロレスで使うヤツ。なぜかというと、店主が元プロレスラーだからだ。

この店の食事は、どれも旨くて美味しい。だからか、近隣だけでなく、遠くからも客が来る。その中には、ちょっとワケありな客も……。


『国道食堂』    小路幸也


徳間書店  ¥ 1,870

賑やかな町を離れ国道沿いにある国道食堂。なぜか、店の中にはリングがある
二方将一 三十三歳 配置薬ルート営業マン
本橋十一 五十七歳 国道食堂店主 元プロレスラー
二階堂浩 四十二歳 巡査部長 小田原警察署 皆柄下錦織駐在所
高菜祐希 三十二歳 株式会社ミコー 第三営業部係長
二方将二 二十八歳 マンキュラスホテル東京 料飲部レストラン蒼天ホール
山田久一 五十九歳 トラックドライバー
篠塚洋人 三十八歳 株式会社ニッタ 機器オペレーター
友田金一 七十五歳 国道食堂従業員
地崎裕  二十二歳 大学生
久田充朗 五十七歳 私立高校体育教師
野中空  十八歳  治畑市立東第一高等学校三年
見村豪  五十五歳 元スタジオミュージシャン ライブハウス経営者
橋本卓也 三十一歳 トランスポーター
蓑原顕司 六十七歳 俳優
本橋十一 五十七歳 国道食堂店主 元プロレスラー




実はこの物語、その“仕事”っていうのが、一つの大きなテーマになっている。

上の目次、・・・面白いでしょう。人の名前が並んでいる。そして、年齢と職業が添えられている。それぞれの項目は、そこにある名前の人の語りで進行することになるんだ。その中で、その人の人となり、これまで歩んできた道のり、その職業がどんなものであって自分がどう取り組んでいるかってことが、語られていく。

作家の小路幸也さんは、それぞれの職業について、本当によく調べていて、その仕事に絡んでその人の人となりが、はっきりとした姿で浮かび上がってくる。

“1st seazon”とあるから、次回作も期待していいんだろうか。

この“1st seazon”は、最初に名前の登場する二方将一の、新たな挑戦を縦糸にして話が進められる。彼はかつて、高校生の時の話だが、俳優になりたいと、おぼろげながら考えたことがあった。どうにもならない事情でそれを断念した彼だったが、国道食堂店主本橋十一との出会いを通して、その店にあるリングに上がることを思い立った。一人芝居の役者として。

リングに上がる階段に向かうと、二方はすでに自分の演じる人物になりきっている。周囲にも、それが明確に感じられる。彼はそういう、希有な才能の持ち主だった。

この物語には、14人の主役が登場する。そしてその項目の始まりと共に、彼は語り始める。まるで、二方が自分の演ずべき人物になりきっているかのように、作家の小路幸也さんが、その14人を演じているようにも思える。

どんな仕事でもそうだろうけど、良いときもあれば、悪いときもある。その仕事に関する世の中の認識も、長い間には変わってしまうこともある。

私は高校教師だったけど、仕事に就いた1980年代と今では、本当に大きく変わった。トラックドライバーの仕事も変わったという話がこの本にも出てきたけど、私の仕事の変化も大きかった。

ある時期から仕事がマニュアル化されるようになって、これには最後までなじめなかった。それでも生徒や親の、教師に対する認識が大きく変わってきたので、教師が一人の人間として生徒に向き合うのは、絶対必要であるにもかかわらず、時には危険も伴うケースになってしまった。

何度か揚げ足を取られた。すべて問題化させずに処理できたが、危なかった。弱者に、彼らだけが使える最強のカードを持たせてしまったんだから、この問題はおそらく解決はできない。マニュアルに従って、“隙を見せない”、“関わらない”ってことだけが、唯一の対策だ。

それでもなんとか、職業教育だけは実現して欲しいもんだな。



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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本


















































































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