めんどくせぇことばかり 『死体は語る 2』 上野正彦
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『死体は語る 2』 上野正彦

この本の著者、上野正彦さんが、監察医になって10年ほど経った頃のことだという。

朝食をとりながらテレビを見ていたら、若い主婦がメッタ刺しにされ、残忍な犯行と報じられていたんだそうだ。さて、上野さんのこの日の朝ごはんは、どんなものだったでしょう。昭和4年生まれの上野先生だからね。私の父より一つ下。父はとっくに死んだけどね。まさかパン食ってことはないだろう。ご飯にみそ汁、めざしか目玉焼きが付いて、あとは青菜のおひたしに漬物かな。

もしかしたら、そんな朝ごはんを食べていたのかも知れない。そんな朝のニュースで、残忍な犯行が報じられて、上野先生はどんな一日を始めるのか。

「その日は、メッタ刺し事件を検死に行こうと思いながら家を出た」んだそうだ。

世の中に、メッタ刺しの死体、自殺の死体、交通事故死の死体や火事による焼死体を思い描きながら、我が家をあとに仕事に向かう人が、いったい世の中にどれくらいいるもんだろう。

仕事場、・・・警察の霊安室だというが、そこに着くと、また血だらけの着衣のままのメッタ刺しの死体が待っている。鑑識が写真を撮ったあとで服を脱がせて裸の状態にする。若い主婦を、裸にしちゃうんだな。脱がさなきゃ検死できないからね。裸にして刺し傷を確認したところ、首と胸腹部に全部で18個の刺し傷。

裸の死体を見た段階で、死斑が少ないことから、失血死であることが分かったそうだ。傷の大きさ、深さから凶器を推定し、致命傷を探し出す。傷口を確認していくと、あらかた指した順番も分かるそうだ。首の4つの傷は乾いた血が付着している。これは生きている段階で指されたもの。中の一つは頸動脈がを切っている。大出血をして血圧が低下。意識が薄れてその場に倒れるが、加害者はさらに襲いかかる。

胸腹部の8つの傷は、傷口にわずかに出血している。これは瀕死状態で指されたもので、出血は多くない。加害者は、被害者のそんな状態が分からない。もしかしたら、最初のショックから覚めて反撃してくるかも知れないと、さらに追い打ちをかける。残りの6つの傷は、出血のあとはまったくない。被害者はすでに死んでいる。

「メッタ刺しは残忍だ」「怨恨だ」「刺すことに快感を感ずる異常な者の犯行だ」などと開設されることがあるが、じつはまったく違う。人を殺すことに感情を動かすこともない残忍なものであれば、それこそ一刺しで決める。相手に対して弱い立場の者の犯行であるとき、やり替えされないように確実に殺したいという思いから、めった刺しになってしまう。

そういうもんなんだという。


『死体は語る 2』    上野正彦


文春文庫  ¥ 715

2万体を越す検死実績から導き出した、死体の声なき声を聞く上野法医学の決定版
偽装を見破った話(死斑篇)
弁慶の立ち往生(死体硬直篇)
真冬の水風呂(体温の冷却篇)
死んでも髭や爪は伸びるのか(死体の乾燥篇)
青鬼・赤鬼・黒鬼・白鬼(死亡時刻の推定篇)
生前のきず、死後のきず(生活反応篇)
語らぬ死体が語り出す(出血・うっ血・溢血点篇)
顔がうっ血している死体(窒息篇・その1)
窒息死の謎を解け(窒息篇・その2)
耳から溺れる話(溺死篇・その1)
水中死体は溺死とは限らない(溺死編・その2)
メッタ刺しは小心者の仕業?(損傷編・その1)
飛び降り自殺は足から着地?(損傷編・その2)
頭部への衝撃が本当に怖い理由(損傷篇・その3)
外傷を見れば事件が分かる(交通外傷篇・その1)
墜落外傷と交通外傷は似ている(交通外傷篇・その2)
銃でどこを撃てば人は死ぬか(銃創篇)
火傷死、焼死、熱中症(その他の外因死篇・その1)
凍死、感電死、飢餓死(その他の外因死篇・その2)
生と死を考える(嬰児殺篇)
独り歩きをする毒物(中毒篇・その1)
青酸化合物、練炭ガス、サリン(中毒篇・その2)
酒は百薬の長か(中毒篇・その3)
砒素、トリカブト…まだある毒物(中毒篇・その4)
元気な人の突然死(内因性急死篇)
人はいかにして死ぬか(尊厳死、安楽死、終末医療篇)






前の本には、こんなにも写真や挿絵を使ってたっけ。

写真や挿絵って言ったって、この本の場合、あんまり気持ちいい種類のものじゃないからね。たとえば頭蓋底の写真が出てくるが、これは首でも絞められて死んだ人の脳みそだろう。コンクリートにたたきつけられて時に現れる辺縁性出血蒼白になったふくらはぎをした両足の写真があるが、これはやっぱり、あれだよね。高いところから、・・・飛び降りちゃった、あれだよね。

生々しい感じが、前のものよりも強くなっているような気がする。

東京の荒川で、若い女性の漂流死体が発見され、上野先生が検死したという。首には首つりを思わせる索条痕がかすかにある。結果としては、仮死状態での溺死だったそうだ。

荒川縁で首を吊ったが、紐が切れて仮死状態で川に落ち、溺死した。

荒川下流は大きな橋と鉄橋で、首をつれる場所がない。上流にはいくらでも木が生えているが、そこから下流まで流れてきたら、身体の損傷が進むはず。

何人かの監察医の話の中から、地蔵背負いの話が出たそうだ。

石の地蔵さんが彫り上がると、村人が行列を作って重いお地蔵さまを目的の場所まで運ぶ。運び方は、お地蔵さんのあごの下に紐をかけ、力自慢の若者が紐の両端を持って、お地蔵さんと背中合わせになるようにして担ぎ上げる。お地蔵さんは若者の背中で、首つりをしているような格好になる。

地蔵背負いなら、首つり自殺に見せかけた殺人が可能になる。それが出来るのは、女性との身長差の大きい人物である。それから、片手が不自由な人物でも、この方法は可能である。

まもなく、被害者の女性の身元が判明し、加害者が逮捕される。新聞に掲載された写真には、片腕の大男の犯人が移っていたそうだ。

彼は、荒川の土手に女性を誘い出し、話をする内に小雨が降り出したので、濡れないようにと、女性の首にタオルを掛けてやった。頃合いを見て、タオルの両端を合わせ持ち、女性を自分の背中に担いで地蔵背負いにした。そのまま土手を駆け下り、仮死状態の女性を荒川に捨てた。

そこまで言い当てられることは、メッタにあることではないとは言うが・・・。

それにしても、担当日によっては、都内だけで30の変死体が出るんだそうだ。


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ジャンル : 本・雑誌

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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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