『女と男 なぜわかりあえないのか』 橘玲
人間の脳は、長い進化の過程の中で、今あるそのように設計されてきた。反発する人もいるだろうが、多くの研究者が膨大な実験を積み重ねてこの結論に達しており、現時点でこれを上回る説得力を持つ科学は存在しない。生き物はすべて、構成により多くの遺伝子を残すよう設計されてきており、人間も例外ではないというだけのことだ。
男にとってセックスのコストほぼゼロであるから、より多くの遺伝子を残そうとすれば、妊娠可能なより多くの女とセックスする。それに対して、妊娠・出産・子育てを考えた場合、女にとってセックスのコストはものすごく高い。だから、セックスする相手は慎重に品定めする必要がある。
妊娠可能なより多くの女とセックスしたいというのが、男の生き残り戦術だったのか。だったら、現実世界で一番都合が良いのは、妻に子育てをさせておいて、他の女と浮気をして子どもを産ませることだな。
まあ、二軒を構えるには、それなりの甲斐性がなければ出来ないことだけど、それが出来るなら、何軒でも構えれば良い。道徳には反するけどね。
女にだって、戦略はある。ただし、最近それが、かなり危険になってきた。
女が身も心も震える状況って言うのは、第一番手の男に選ばれて結ばれるという状況。男としての魅力にあふれ、経済的にも社会的にも地位が高い男の子どもを産み、育てる。その場合、心配しなければならないのは、それだけの男には、いくらでも女が言い寄ってくる。幼い子どもを抱えて放り出されては、母子ともに飢えて死んでしまう。
そこで、一番手の男ほどではないが、それなりに能力を持った男を、長期的なパートナーとしておく。その上で、一番手の男の子どもを産めば、確実に育てることが出来る。
カッコウは自分で子どもを育てず、他の鳥の巣に托卵する。短期間で孵化したカッコウの雛は、まわりの卵や雛を巣の外に蹴飛ばし、仮親からの給餌で成長する。
社会的な動物でもチンパンジーのような乱婚型なら、父親は子育てをしないから、血がつながっているかどうかに関心を持つ必要はない。だが一夫一妻型では、父親は子どもにさまざまな資源を投入するのだから、托卵戦術は大問題になる。
処女を珍重したり、思春期を迎えた女性の顔にヴェールをかぶせたり、クリトリスなど性器の一部を切除したり、貞操帯で性行為が出来ないようにするのは、托卵への文化的な防衛策と考えることが出来る。


この子は、本当に自分の子なのか。妻が、他の男と浮気をして生まれた子じゃないのか。これは単なる男の妄想とは言い切れない。
父親が血のつながらない子どもを、自分の実の子と思って育てているケースは、10パーセント前後だそうだ。遺伝病を調べるために行なわれた調査で、10パーセントの子どもが父親と遺伝的なつながりがないという結果が出たこともあるそうだ。
まったく、すごい本を世に出したもんだ。
書いたのは、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』の橘玲さん。“男と女”、いや“女と男”だね。なにしろ、女は男の劣化したコピーではなく、性の基本は女、放っておけば女になる。その女から、男が別れ出た。
アダムの肋骨からイブが作られたなんて言う時点で、すでに間違ってた。イブからアダムが分岐したんだ。
でも、だからこそ、やっぱり女と男は違う。違いすぎる。男と女を合わせて、種は維持されているわけだけど、じつはそれぞれ異なる性戦略を通して、それが成し遂げられているわけだ。
男の性戦略は、妊娠可能なできるだけ多くの女とセックスをして、できるだけ多くの女を妊娠させること。
セックスして妊娠し、子宮内で赤ちゃんを育てて出産し、お乳を与え、大きくなるまで育て上げる女の性戦略は、当然男とは違ってくる。長く付き合え、一緒に子育てをしてくれる男としかセックスしない。
その出発点が違う。ぶつかり合って、けんかにもなる。すったもんだして、子どもを育て上げていくうち、じきに更年期を迎え、女も男も性ホルモンのレベルが下がってくる。そうなると、同じご飯を食べて、同じような生活をしているんだから、考えることもよく似てくる。
脳の性差がなくなって、戦略にこだわる必要もなくなった頃、戦友のような絆で結ばれるのか、幸福な夫婦の仮面がはがれて憎み合うのか。
うちはどうかな。
男にとってセックスのコストほぼゼロであるから、より多くの遺伝子を残そうとすれば、妊娠可能なより多くの女とセックスする。それに対して、妊娠・出産・子育てを考えた場合、女にとってセックスのコストはものすごく高い。だから、セックスする相手は慎重に品定めする必要がある。
妊娠可能なより多くの女とセックスしたいというのが、男の生き残り戦術だったのか。だったら、現実世界で一番都合が良いのは、妻に子育てをさせておいて、他の女と浮気をして子どもを産ませることだな。
まあ、二軒を構えるには、それなりの甲斐性がなければ出来ないことだけど、それが出来るなら、何軒でも構えれば良い。道徳には反するけどね。
女にだって、戦略はある。ただし、最近それが、かなり危険になってきた。
女が身も心も震える状況って言うのは、第一番手の男に選ばれて結ばれるという状況。男としての魅力にあふれ、経済的にも社会的にも地位が高い男の子どもを産み、育てる。その場合、心配しなければならないのは、それだけの男には、いくらでも女が言い寄ってくる。幼い子どもを抱えて放り出されては、母子ともに飢えて死んでしまう。
そこで、一番手の男ほどではないが、それなりに能力を持った男を、長期的なパートナーとしておく。その上で、一番手の男の子どもを産めば、確実に育てることが出来る。
カッコウは自分で子どもを育てず、他の鳥の巣に托卵する。短期間で孵化したカッコウの雛は、まわりの卵や雛を巣の外に蹴飛ばし、仮親からの給餌で成長する。
社会的な動物でもチンパンジーのような乱婚型なら、父親は子育てをしないから、血がつながっているかどうかに関心を持つ必要はない。だが一夫一妻型では、父親は子どもにさまざまな資源を投入するのだから、托卵戦術は大問題になる。
処女を珍重したり、思春期を迎えた女性の顔にヴェールをかぶせたり、クリトリスなど性器の一部を切除したり、貞操帯で性行為が出来ないようにするのは、托卵への文化的な防衛策と考えることが出来る。
ある国の王様が戦争に出掛ける際に、王妃に貞操帯を付け、その鍵を最も信頼できる家臣に預けた。 「万が一、余が戦死したならば、この鍵で王妃を解き放つがよい」 「その命令、しかと承りました」 王様は安心して軍と共に港へ向かった。王様が軍艦に乗って敵地へ赴こうとしたとき、丘の上から家臣が馬で疾駆してきた。 「王様! 王様ぁぁ!」 「なんじゃ! いかがいたした!」 「鍵が間違っておりまするぅぅ!」 |
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この子は、本当に自分の子なのか。妻が、他の男と浮気をして生まれた子じゃないのか。これは単なる男の妄想とは言い切れない。
父親が血のつながらない子どもを、自分の実の子と思って育てているケースは、10パーセント前後だそうだ。遺伝病を調べるために行なわれた調査で、10パーセントの子どもが父親と遺伝的なつながりがないという結果が出たこともあるそうだ。
ジョージは町一番の美人キャシーの心を射止め、結婚を約束した。その晩、ジョージは両親に喜びの報告をした。 「父さん、母さん、実は僕、キャシーと結婚することにしたんだよ!」 すると父親の顔が突然曇り、部屋へ戻ってしまった。ジョージは慌てて父の後を追い、部屋で事情を聞いた。やがて父親は重い口を開いた。 「実はな...父さんは昔、一度だけ浮気をしたことがあるんだ...キャシーはそのときにできた子供なんだよ...だからオマエはキャシーとは異母兄妹ってことになるんだ」 父親の告白を聞いたジョージがうなだれていると、二人の会話をドアの外で聞いていた母親が部屋に入って来るなりジョージに言った。 「そのことなら全然心配は要らないわよ」 |
まったく、すごい本を世に出したもんだ。
書いたのは、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』の橘玲さん。“男と女”、いや“女と男”だね。なにしろ、女は男の劣化したコピーではなく、性の基本は女、放っておけば女になる。その女から、男が別れ出た。
アダムの肋骨からイブが作られたなんて言う時点で、すでに間違ってた。イブからアダムが分岐したんだ。
でも、だからこそ、やっぱり女と男は違う。違いすぎる。男と女を合わせて、種は維持されているわけだけど、じつはそれぞれ異なる性戦略を通して、それが成し遂げられているわけだ。
男の性戦略は、妊娠可能なできるだけ多くの女とセックスをして、できるだけ多くの女を妊娠させること。
セックスして妊娠し、子宮内で赤ちゃんを育てて出産し、お乳を与え、大きくなるまで育て上げる女の性戦略は、当然男とは違ってくる。長く付き合え、一緒に子育てをしてくれる男としかセックスしない。
その出発点が違う。ぶつかり合って、けんかにもなる。すったもんだして、子どもを育て上げていくうち、じきに更年期を迎え、女も男も性ホルモンのレベルが下がってくる。そうなると、同じご飯を食べて、同じような生活をしているんだから、考えることもよく似てくる。
脳の性差がなくなって、戦略にこだわる必要もなくなった頃、戦友のような絆で結ばれるのか、幸福な夫婦の仮面がはがれて憎み合うのか。
うちはどうかな。
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