めんどくせぇことばかり 『囚われの山』 伊東潤
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『囚われの山』 伊東潤

私にとって八甲田山雪中行軍といえば、新田次郎の『八甲田山死の彷徨』。

書き下ろしの単行本が出たのは1971(昭和46)年。当時、11歳の私は、まだ山にも、新田次郎にもはまってない。しかも、学校の図書館の本しか読んでない。家には祖父や父、叔父叔母の読んだ本が置いてあったが、・・・じつは、ちょっと読んだ。そこから大人の世界を垣間見たりしていた。

新田次郎の本をはじめて読んだのは、中学3年の時。『孤高の人』を読んだ。

中学時代、サッカー部に入っていた。自分でも分かってるんだけど、勝負事だとついつい熱くなりすぎる。サッカーの試合でもそう。校内の球技大会でさえ、上級生と悶着を起こした。同じ郡市の中学サッカー部には、試合の時にやり合った相手が何人もいて、ばつが悪い。実際、高校に進学してみればそんなことはなく、「あれ、サッカー部じゃないの」って、何人かから声をかけられた。でも、勝負事からは離れたかった。

「山岳部なんかどうだろう。自分の家の前は、すぐ武甲山だし」なんて気持ちがあって、『孤高の人』を読んで、思いっきりはまってしまった。新田次郎をはじめとする作家さんたちの、山の本を読みあさった。だけど、『八甲田山死の彷徨』は、文庫になってなかったので、知らなかった。

1977(昭和52)年、『八甲田山死の彷徨』を原作として、『八甲田山』という映画が作られた。新田次郎が原作と知って読んでみたかったけど、文庫になってなかったのであきらめた。

封切られたのは、夏のさなかだったような記憶がある。だけど、この時、私は映画を見ていない。当時、・・・今も、私の住んでいた田舎町には、封切りの映画を上映する映画館はなく、それが入ってくるのは半年以上遅れた。しかも、大学受験の年で、上映されたのは受験時期真っ只中。

結局、見そびれてしまった。

無事大学に合格し、田舎町を出て上京した翌年に、『八甲田山死の彷徨』が文庫本で出た。それを読んで、おそらくその年の夏、どこかの映画館でやってるのを見つけて、ようやく『八甲田山』という映画を見た。どうも、人が凍え死にしていくようは映画は、寒い時期には、身につまされちゃって良くないようだ。

私は、2年遅れて、「天は我々を見放した」と夏の空を仰いだ。


『囚われの山』    伊東潤

中央公論新社  ¥ 1,980

話題の歴史小説『茶聖』の作家が、有名な「八甲田雪中行軍遭難事件」を題材に挑む
プロローグ
第一章 あてどなき行軍
第二章 忠死二百人
第三章 雪天烈風
第四章 最後の帰還兵
エピローグ




『茶聖』で話題になった伊東潤さんの本。

なんて言っても、『茶聖』を読んでないんだけどね。この間、連れ合いが読んでいたな。私がこの本に興味を持ったのは、やっぱり、題名の“山”。カバーの絵から、おそらく八甲田山と分かる。作者の名前は、伊東潤。伊東潤、伊東潤、・・・この間、連れ合いの読んでた『茶聖』の作者だと思い出した。それなら、『茶聖』も家にあるのか。・・・あとで読んでみようかな。
雑誌「歴史サーチ」の編集部員菅原誠一は、特集企画「八甲田雪中行軍遭難事件」を担当することになった。
遭難死した兵士の数が記録によって違うことに気づいた彼は、青森で取材を開始。当時の悲惨な状況を改めて知る。

特集企画は成功を収め、社長からもう一度、特集を組むこと指示された菅原は、再び青森を訪れた。
遭難死した兵士数の違いにこだわる彼は、遭難事件の半年後に病死した稲田庸三一等卒に注目。取材のため、地元ガイドの小山内ととともに冬の八甲田に足を踏み入れた、菅原が見たものとは一体・・・。

話題の歴史小説『茶聖』の人気作家が、世にも有名な「八甲田雪中行軍遭難事件」を題材に挑んだ、傑作クライムノベル!

199人が遭難死した、八甲田山雪中行軍遭難事件。たしかに、もっと光が当てられていい。なにしろ参加者210名のうち、199名が死んでいる。

作者の伊東潤さんが目をつけたのが、あまりの軽装備に情報不足。そんな状態で雪中行軍を強行してしまうことの不自然さ。それから死者は199名であるにもかかわらず、200と書いている報告が存在すること。

ある意味では、端からでも想像のつく些細なことではあるんだけど、それらを掘り下げて、あるいはつなぎ合わせて、ストーリーを展開させている。もとから、199名が吹雪の中に命を落とすという、本当に起こった事件がもとになっている。最初からそこにある重厚さを損なうようなってんかいは許されない。

だから、雪中行軍の様子は、あるがままでなければいけない。それがあるがままであって、その上で読者を引きつけつストーリー展開は、見事なものだと思う。極限における人間の描き方も良かった。

そこに主人公の、雑誌編集部員である菅原を関わらせていくわけだけど、よく分からない世界ではあるけれど、おもしろく読めた。

ただ、最後にこの物語の中で、もっとも恐ろしく、もっとも悲劇的な、・・・あんな事実が待ち受けていようとは・・・。



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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本


























































































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