めんどくせぇことばかり 『シンデレラの謎』 浜本隆志
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『シンデレラの謎』 浜本隆志

《銀河鉄道999》に、主人公の星野鉄郎を銀河の果てに導く、謎の美女メーテルという女性が登場する。

メーテルは古代ギリシャ語で母を表す言葉。大地を意味するのが“ゲー”。“ゲー”が“デー”に転化し、それをメーテルにつければ、大地と豊穣の女神デメテルになる。・・・理屈としてはなんとなく合っている。

豊穣の神デメテルには、ゼウスとの間に生まれたペルセポネという娘がいた。あるとき、そのペルセポネが行方不明になり、必死になって探している途中、兄弟であるハデスからせまられる。身の危険を感じたデメテルが牝馬に変身して逃れようとすると、ハデスも牡馬に変身してデテメルを犯した。

怒ったデテメルは洞窟に逃げ込み、そのため大地は穀物を生み出さず、世は飢饉に瀕する。ゼウスは運命の女神のバウボを遣わし、卑猥な踊りでデメテルを洞窟から誘い出す。このあとゼウスとデメテルの話し合いで、デメテルはペルセポネとハデスの結婚を許す。

兄であるハデスの乱行に対するデメテルの怒りで大地は穀物を生み出さなくなり、ゼウスの知恵によって、その難を逃れるという話の展開は、スサノオの乱行に対するアマテラスの怒りで世は漆黒に閉ざされてしまい、オモイカネの知恵によって、その難を逃れるという日本神話の展開に似る。

運命の女神バウボの卑猥な踊りでデメテルを誘い出すというのは、すぐにアメノウズメの踊りとそれをはやし立てる声でアマテラスを誘い出す天の岩戸伝説そのものだが、《運命の女神バウボの卑猥な踊り》というのは、この本を読んではじめて知った。

でも、日本神話がいくつもの点で、ギリシャ神話の影響を受けているであろうことは、これまで何度も感じたことがある。この本では、その伝播ルートを、黒海沿岸でギリシャ文化の影響を受けたスキタイ人の影響を受けた遊牧騎馬民族によって、北回りで日本に持ち込まれたとしている。

しかし、それでなくても、アケメネス朝ペルシャはすでにインド北西部に及んでおり、ヘレニズム時代には、そこで周辺諸地域の古代文明がシャッフルされ、相互に強い影響を与え合って新たな時代を迎えている。それは中央アジアからシルクロードを通る陸路、また東南アジアを経由する海路で日本に入ってきたと考えるのは、「荒唐無稽な説とは言えない」という著者に、私も賛成だ。



『シンデレラの謎』    浜本隆志

河出ブックス  ¥ 1,650

古代エジプトから日本まで、時代を超えて、なぜ世界規模で伝播したのか
第一章 シンデレラ譚の基本構造
第二章 エジプトからヨーロッパルートのシンデレラ譚
第三章 中近東からアジアルートのシンデレラ譚
第四章 変貌するシンデレラ類話とその連鎖
第五章 ホモ・サピエンスの大移動と神話・民話の伝播
第六章 シンデレラ譚の伝播とメディア
終章 なぜシンデレラ譚は人気があるのか


ずいぶん前の話だけど、とある番組に出演していた若者が、「成田空港から飛行機に乗って、そして降りたときはすでに遠く離れた外国にいるわけだから、歴史や地理の知識なんか必要ない」と言っていた。

「あ~あ、またそんな馬鹿なことを言う奴が出てきた」と呆れていたら、ビートたけしが、「人間の歴史っていうのは、ある意味では移動の連続だから、歴史や地理がちっとも分からなかったら、人間のことがちっとも分からなくなっちゃう」と言っていた。当たり前だな。

神話やおとぎ話も、人の移動にともなって、広がっていった。

私たちの祖先はアフリカで生まれ、その一部がやがて長い旅に出た。私たち物語好きの現代人の祖先は、おそらく私たち以上に神話やおとぎ話を大事にしていたに違いない。

なぜなら、古代の人々にとって、その移動こそが、後に偉大な祖先の物語として神話化されるに違いない、苦難の出来事であったはずだから。

そんな人々が、少なくとも4万5000年前には南アジア、東南アジア、オーストラリアにいたる地域に拡散していった。これらの地域への進出はヨーロッパへの進出よりも早いそうだ。現在の北京近郊の周口店遺跡群が4万年前。日本列島への渡来は3万8000年前頃と想定されているそうだ。

その人たちはすでに、神話やおとぎ話を語り合っていたに違いなく、しかも、人が移動した後に、そのルートが閉ざされたと考えるのは、海で閉ざされて海峡となったケースをのぞいては、むしろ不自然だ。

聖書は、最初の人間が過ごしたはずの楽園を、些細な理由で神に追い出されてしまったことを語っているが、あれは移動の始まりか。

7万年前から1万年前までは最終氷期で、今より大幅に気温が低かった。ノアの箱舟の大洪水は、不信心は人間を神が滅ぼしてしまう物語だけど、実は氷期が終わりに近づいて徐々に気温が上がり、世界のあちこちで大洪水を引き起こしていた。当然世界のあちこちで、大規模な人間の移動が行なわれていたはずである。

ノアの子孫たちは、数は増えても神が準備した世界に広がらず、高い塔を築いて神に近づこうとした。神は人間の不遜な考えを懲らしめるため、それまで一つであった人々の言葉をバラバラにして、人々を世界に散らばらせた。移動させたのだ。

楽園を追放されたイブは、農耕民の祖カインと牧畜民の祖アベルを産んだ。アベルの捧げ物だけが神に喜ばれた嫉妬から、カインはアベルを殺してしまう。農耕民の祖は呪われて、その土地を離れ他の土地へ移動していくことになる。

そのように、聖書はさまざまなエピソードで、人々の移動を語っていることになる。

おそらく神話やおとぎ話は、私たちが想像する以上に早く、速やかに、伝えられ、融合していったに違いない。



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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本






















































































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