めんどくせぇことばかり 『スープでごはん』 みないきぬこ
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『スープでごはん』 みないきぬこ

40年も前のことだ。

ほんの一時期だが、東京の武蔵境駅から15分ほどのアパートに、二つ上の兄と一緒に暮らしていたことがある。二人とも学生で、都内の私立大学に通っていた。勉強するほどに、やることも考えることもめちゃくちゃで、いい気になって、夢と希望をふくらませているという、質の悪い学生だった。

場合によっては返済が免除される当時の育英会奨学金を受け、親からも仕送りされていたが、それでも友人たちと対等に付き合おうとすれば、すぐ底をつく。それでもつらいなんて感じたことはなかった。楽しくて仕方がなかった。

兄が卒業してからは、下北沢から徒歩10分、家賃1万1千円の汚いアパートに移った。一緒に住んでいるときは、兄のことを邪魔に思っていたが、一人になってみると、寂しいってわけじゃないが、二人と一人は大きく違う。

冬の寒い頃、風邪なんかひくと、どうにも心細くなる。もちろん、医者にかかるわけでもない。一晩寝て、汗をかけば直るという信仰があるもんだから、寝袋まで引っ張り出して、ふとんをかぶって寝る。寝る前に、“おっきりこみ”を食っておけば、汗をかくこと間違いなし。それで翌日直っていなければ、すでに打つ手はない。

夕方、雪だるまかというほど重ね着をして、駅前の中華料理屋へ向かう。一世一代の贅沢のつもりで、レバニラ定食とにんにく卵スープを注文する。食べ終わったら、そのエネルギーを夜風に吸い取られないうちに素早くアパートに帰り、ふとんにもぐり込む。これ以上の打つ手は、本当にない。

2年間の一人暮らしの間に、この手は何度か使ったが、失敗した記憶はない。

朝、焼いた鮭がけっこう残ったので、昼飯は鮭チャーハンにした。鮭の他には、ネギ、ピーマン、チンゲンサイを加えた。その場合、スープを何にしようか、いつも迷う。チャーハンの時のスープを考えると、わかめスープしか思い浮かばない。他の中華に合わせるスープなら、適当に鶏の出汁でまとめちゃうんだけど、チャーハンに合わせようとすると、わかめスープしか出てこない。

町中華でチャーハンを頼むと、熱々のラーメンのスープに、刻んだネギをちらしたスープがついてくる。あれじゃ寂しい。だから、わかめ。そこにネギを散らしてもいい。竹の子も面白いかも知れないが、今は冷蔵庫にない。今日は、ニラを試してみた。わかめスープにニラ。これはけっこう美味しかった。

だけど、所詮はわかめスープ。ううん。



『スープでごはん』    みないきぬこ

池田書店  ¥ 1,265

かんたんに作れて、栄養面もボリュームも満足のスープレシピ集
PART1 野菜たっぷり おかずスープ
コラム1 もう一品欲しいときに!かんたん副菜
PART2 肉がっつり おかずスープ
コラム2 なめらかな舌触りが嬉しい!かんたんポタージュ
PART3 シンプルスープ+主役ごはん
コラム3 疲れた、風邪っぽい etc 体調を整えるスープ


スープは、自由だ。

何をあわせてみたって、それほど失敗と言うことがない。素材の味をスープに出して、その味を見て、最後に塩でも、しょうゆでも、味噌でも、薄めから味をつけていけばいい。

素材から出る味だけで、出汁が入らない場合もある。特に、肉や魚のスープなら、出汁なんて入らない。肉や魚を使わない場合、この本で利用している出汁は、チキンスープ、中華スープ、和風だしと言ったところ。

おかしな言い方だが、野菜をそのスープで煮れば、それだけで間違いなく美味しいスープになる。何を入れるか、どの出汁にするか、それ以外も含めて、やはりスープは自由だ。

私は、邪道と知りつつ、カレールウを使うこともある。カレールウは、万能だ。だけど、カレールウまでいくと、少し卑怯かも知れない。

秋は、なんと言っても“きのこ汁”だな。高尾山の、城山や景信山の茶店で、きのこ汁を出している。たかがきのこ汁でそれだけの代金を取るのかと驚いて、ワンゲルの高校生を連れて行ったとき、生徒にはおむすびだけ用意させ、大鍋でどっさりきのこ汁を作って、お昼ごはんにしたことがある。これは大変評判がよかった。

この時、きのこは何でもいいんだけど、もしもマイタケを入れるなら、私は出汁は必要ないように思う。一度、マイタケを含むきのこ類で、しょうゆで味をつけただけのきのこ汁をスープにしたラーメンを作ったことがある。これはとてつもなくうまかった。

スープは、偉い。

なんと言っても控えめだ。おかずスープくらい具だくさんになっても、ごはんを引き立てる。いや、もう、ごはんすらいらない。スープだけで、十分、お腹にもたまる。たとえ、そんな状況であったとしても、ごはんやパン、いつもの主菜をないがしろにはしない。スープだけの食事というのは、あくまでも非日常という態度を崩さないところが偉い。

日頃、取りづらい野菜が、スープならたくさん取れるというところも偉い。食欲がないときでも、食べやすいというところも偉い。私なりの意見だけど、何でもないごはんを、なんかすごいごはんのように演出してくれるところが偉い。なんと言っても、いつもごはんを美味しくしてくれるところが、とっても偉い。


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テーマ : 料理の本
ジャンル : 本・雑誌

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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本






















































































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