『あかり野牧場』 本城雅人
感染症が流行してから、いろいろなスポーツの大会が中止になったり、延期になったりしている。最近、ようやく、対策を施して、いろいろなスポーツの大会が再開されつつあるけどね。
JRAの競馬は、レースをやめなかった。走るのは馬だからね。人間の感染症のせいで、競走馬として走れる短い期間を棒に振らせたらかわいそうだもんね。お金が絡んでくる部分もあるけど、それ以上に競馬という一つの文化、競馬に関わる一つの社会が途切れてしまう可能性だってあったろうからね。
競馬場に観客は入れないで、レースはそのまま行なわれていった。競馬界って、かなり限定された社会だから、流行が中に入ってしまったら大変なことになるだろうから、関係者の緊張感は並大抵のものじゃなかったろう。
週末になっても、テレビでも、まったくスポーツ観戦が出来なくなった中、競馬だけはやってた。本当、競馬中継に救われたようなところがあった。
武豊がデビューした頃に競馬を始めた。オグリキャップが活躍してた頃だ。一時はかなりのめり込んだけど、子どもの教育費が馬鹿にならなくなって、馬券からは離れてしまったけど、上記のような理由で、また1レース100円、200円で遊ばせてもらうようになった。競馬って、本当に面白いね。
さて、この本。
あかりの牧場で生まれたサラブレッドのキタノアカリ。私も最初、ジャガイモみたいとか、小麦みたいとか思ってしまった。この本の中にも出てくる話だけど、ジャガイモならキタアカリ、小麦ならキタノカオリだった。そのキタノアカリに関わるさまざまな人間模様が描かれたこの物語、とても面白かった。
家族経営の生産牧場、馬主、調教師、騎手、それぞれの関係者に、それぞれの人生があるんだな。まさに『騎手の一分』であり、牧場主の一分、調教師の一分、馬主の一分だ。
『優駿』に連載されていたものを、一冊にまとめたものだそうだ。


物語でもドラマでも、最近は現実的であることが求められることが多いらしい。
私のように、人生に躓きながら生きてきた人間にすれば、本当のところ、そういったものには夢を見させてもらいたいという気持ちが強い。馬券を買うときも、ついつい夢を見がちで、・・・つまりは外してしまう。現実は厳しい。
競馬を始めて間もない頃、最初に入れ込んだ馬が、ライスシャワーだった。
的場に乗り変わった皐月賞から追いかけるようになった。皐月賞と、それに続くNHK杯で大敗し、その次がダービーだった。ミホノブルボンの一番人気のレースで、スタートから逃げるミホノブルボンを番手でライスシャワーが追いかける展開。
結局、このレースは行った行ったの決着になって、一着ミホノブルボンに続き、ライスシャワーは4馬身差の二着に残った。前の二走を大敗していただけに、馬連300倍近い万馬券。菊花賞ではミホノブルボンを逆転して一着に入り、ステイヤーとしての才能を開花させた。
しかし、ライスシャワーはミホノブルボンの三冠を、最後の菊花賞で邪魔したと、とらえたファンも多かった。天皇賞春では連覇を狙う一番人気のメジロマックイーンまで破ってしまった。連覇を邪魔しちゃったわけね。鞍上は人気絶頂の武豊。どうも、ライスシャワーは、悪役ムードが漂っていた。漆黒の小さな馬体でね。だけど私は、大好きだった。
そのライスシャワーは1995年の宝塚記念で、3コーナーで骨折して転倒、レース場で予後不良と判断され、殺処分となった。落馬した的場騎手は、馬運車で運ばれるライスシャワーを最敬礼で見送っていた。的場を男にした馬だからね。
武豊が乗ったサイレンススズカは、他馬を大きく引き離して逃げる4コーナーだった。鞍上の武豊が突然手綱を絞って馬を止め、下馬。その脇を、後ろから追ってきた他馬が通り抜けていく。
レース終了後、4コーナーで、顔を蒼白にした武豊とサイレンススズカがテレビ画面に映し出される。えっ、サイレンススズカまで!
物語やドラマでも、リアルであることが求められるご時世、私はこの物語のラストに描かれるダービーの場面、キタノアカリが、ただ無事に走りきることだけを祈りつつ読んだ。
そして、歓声を上げた。
JRAの競馬は、レースをやめなかった。走るのは馬だからね。人間の感染症のせいで、競走馬として走れる短い期間を棒に振らせたらかわいそうだもんね。お金が絡んでくる部分もあるけど、それ以上に競馬という一つの文化、競馬に関わる一つの社会が途切れてしまう可能性だってあったろうからね。
競馬場に観客は入れないで、レースはそのまま行なわれていった。競馬界って、かなり限定された社会だから、流行が中に入ってしまったら大変なことになるだろうから、関係者の緊張感は並大抵のものじゃなかったろう。
週末になっても、テレビでも、まったくスポーツ観戦が出来なくなった中、競馬だけはやってた。本当、競馬中継に救われたようなところがあった。
武豊がデビューした頃に競馬を始めた。オグリキャップが活躍してた頃だ。一時はかなりのめり込んだけど、子どもの教育費が馬鹿にならなくなって、馬券からは離れてしまったけど、上記のような理由で、また1レース100円、200円で遊ばせてもらうようになった。競馬って、本当に面白いね。
さて、この本。
あかりの牧場で生まれたサラブレッドのキタノアカリ。私も最初、ジャガイモみたいとか、小麦みたいとか思ってしまった。この本の中にも出てくる話だけど、ジャガイモならキタアカリ、小麦ならキタノカオリだった。そのキタノアカリに関わるさまざまな人間模様が描かれたこの物語、とても面白かった。
家族経営の生産牧場、馬主、調教師、騎手、それぞれの関係者に、それぞれの人生があるんだな。まさに『騎手の一分』であり、牧場主の一分、調教師の一分、馬主の一分だ。
『優駿』に連載されていたものを、一冊にまとめたものだそうだ。
『あかり野牧場』 本城雅人 祥伝社 ¥ 1,760 ダービーのスタンドが、ファンで埋め尽くされる日が戻りますように |
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物語でもドラマでも、最近は現実的であることが求められることが多いらしい。
私のように、人生に躓きながら生きてきた人間にすれば、本当のところ、そういったものには夢を見させてもらいたいという気持ちが強い。馬券を買うときも、ついつい夢を見がちで、・・・つまりは外してしまう。現実は厳しい。
競馬を始めて間もない頃、最初に入れ込んだ馬が、ライスシャワーだった。
的場に乗り変わった皐月賞から追いかけるようになった。皐月賞と、それに続くNHK杯で大敗し、その次がダービーだった。ミホノブルボンの一番人気のレースで、スタートから逃げるミホノブルボンを番手でライスシャワーが追いかける展開。
結局、このレースは行った行ったの決着になって、一着ミホノブルボンに続き、ライスシャワーは4馬身差の二着に残った。前の二走を大敗していただけに、馬連300倍近い万馬券。菊花賞ではミホノブルボンを逆転して一着に入り、ステイヤーとしての才能を開花させた。
しかし、ライスシャワーはミホノブルボンの三冠を、最後の菊花賞で邪魔したと、とらえたファンも多かった。天皇賞春では連覇を狙う一番人気のメジロマックイーンまで破ってしまった。連覇を邪魔しちゃったわけね。鞍上は人気絶頂の武豊。どうも、ライスシャワーは、悪役ムードが漂っていた。漆黒の小さな馬体でね。だけど私は、大好きだった。
そのライスシャワーは1995年の宝塚記念で、3コーナーで骨折して転倒、レース場で予後不良と判断され、殺処分となった。落馬した的場騎手は、馬運車で運ばれるライスシャワーを最敬礼で見送っていた。的場を男にした馬だからね。
武豊が乗ったサイレンススズカは、他馬を大きく引き離して逃げる4コーナーだった。鞍上の武豊が突然手綱を絞って馬を止め、下馬。その脇を、後ろから追ってきた他馬が通り抜けていく。
レース終了後、4コーナーで、顔を蒼白にした武豊とサイレンススズカがテレビ画面に映し出される。えっ、サイレンススズカまで!
物語やドラマでも、リアルであることが求められるご時世、私はこの物語のラストに描かれるダービーの場面、キタノアカリが、ただ無事に走りきることだけを祈りつつ読んだ。
そして、歓声を上げた。
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