めんどくせぇことばかり 『ニッポンの浮世絵』 日野原健司 渡邉晃
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『ニッポンの浮世絵』 日野原健司 渡邉晃

現在の価格で言えば、500円前後という安い値段で売られていたんだそうだ。

そう、この浮世絵が。

美しい自然や風景、人々の暮らし、憧れの美人や歌舞伎役者など、江戸時代の庶民がぜひ手元に置いて楽しみたいと思うような絵画が、たったの500円前後。なんて豊かな時代だったんだろう。

富士山では《神奈川沖浪裏》もいいけど、私はなんと言っても《凱風快晴》がいいな。日に焼けた、夏の富士山の圧倒的な富士山だ。

先日、埼玉県と東京都の境界に連なる長沢背稜と呼ばれる稜線を歩いてきた。少し南側の景色が開けると、そこには必ず富士山の姿がある。

それはまるで、こっちが富士山を見ていると言うよりも、そこを歩く私を、ずっと富士山が見ているかのような錯覚を起こさせる。『富嶽三十六景』とは、結局そういうことであったかも知れない。

富士山に並んで、浮世絵には筑波山が描かれていることも多い。『名所江戸百景』の《隅田川水神の森真崎》には、咲き誇るや桜の背景に水神の森と筑波山が描かれている。

私が住む、関東平野の西の果てからは、ちょっと丘陵地帯に登れば、どこからでも筑波山が見える。富士山を見ようとすると、奥武蔵や長沢背稜が邪魔をすることもあるが、筑波山を見ることを邪魔する山は、どこにもない。

江戸の町からであれば、富士山を見ることを邪魔するや間もなかったはず。富士と筑波は、それぞれ西と東のなじみだったんだろう。

江戸の町の人たちというのは、そういう意味でも豊かで、贅沢な生活をしていたわけだ。幕末や明治に日本を訪れた外国人は、日本人のことを、世界で一番幸せな民族と感じたそうだ。決して経済的に豊かなわけでもない日本人を、外国人はなぜそんな風に思ったんだろう。

何にも邪魔されず富士山でも筑波山でも見て、花を見て、自然を感じて喜べる日本人の、そこ感性にこそ、彼らは大きな価値を感じ取ったんじゃないだろうか。



『ニッポンの浮世絵』    日野原健司 渡邉晃

小学館  ¥ 2,640

富士山、桜、雨、風、雪。浮世絵に感じる「日本らしさ」とは一体
第1章 今も昔も、ニッポン三大モティーフ
富士山 桜 美人
第2章 世界が驚いた絵師たちのまなざし
雨 風 雪 天候と人々 月
第3章 絶対行きたい!ニッポンお楽しみガイド
風呂 花火 グルメ 神社・名城
第4章 庶民のヒーロー、見参!
力士 武士 役者


美人画も役者絵もいいけど、やっぱり私は、自然の描き方に一番大きな浮世絵の価値を感じる。

良く言われるところだけど、“雨”の描き方はすごいよね。なんと言っても強烈なのが、『名所江戸百景』の《大はしあたけの夕立》。激しい雨脚に右往左往する橋上の人々の様子が、なんだか手に取るようだ。葛飾北斎の《すほうの国きんたいばし》もいいな。あれ、橋に雨っていうのは絵になるものなのか。 

西洋の絵画には、雨を描いたものがほとんどなかったんだそうだ。こんなにも激しく、はっきりと描かれた雨を見て、西洋の画家の方々も驚いたことでしょうね。

風はやっぱり、『富嶽三十六景』の《駿州江尻》に見られる突風か。風を描くっていったい何だと思うけど、まさにそこには突風が吹き荒れている。『東海道五十三次』の《四日市 三重川》にも強い風が吹いている。飛ばされて土手を転げる菅笠を懸命に追いかける旅人のあわてようが面白く、裾を風に煽られる道中がっぱの襟を懸命に抑えている旅人も必死さも伝わってくる。

雪にしろ、月にしろ、やはり当時の日本人の持っていた鋭敏な感性は、人々の毎日をより楽しいものにしていたかも知れない。もしも私にもそれが残っているなら、私は今からでも、今よりもっと幸せになれるかも知れない。

とりあえず、もう少し山を歩いて、自然を吸収してみよう。

そう言えば、山に行くとき、私は早く家を出る。連れ合いが寝ているうちに起き出して、途中で食べるおむすびを作り、ごはんを食べて、静か~に出かける。朝ごはんのおかずに何か作る時間がもったいないので、永谷園のお茶漬けを食べる。

丼一杯のごはんに永谷園のお茶漬けをかけ、梅干しを一個乗っけて、お湯を注いで食べるのだが、いくら朝早い出発でも、これを食べると食べないでは大違い。

それは置いといて、今でも永谷園のお茶漬けには、『東海道五十三次』の浮世絵のカードが一枚はいっている。今食べている6個入りの袋からは、《亀山 雪晴》のカードが出てきた。雪の朝の亀山城の前を大名行列が通っていく様子を描いたもので、行列も朝早くから寒いのに大変そうだ。

これも、いいなあ。

浮世絵には、いろいろなものがある。深入りして勉強をしたことはないけど、時々こういう本を見て一通り読んでみると、少しは理解も進むかな。


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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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火山の噴火、土石流に土砂崩れといった災害は、人々の目を山の高見に向けさせた。
それ故に山は、恵みと共に、畏怖の対象でもあった。
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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本


























































































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