めんどくせぇことばかり 山本五十六は名将か『太平洋戦争の名将たち』 歴史街道編集部編
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山本五十六は名将か『太平洋戦争の名将たち』 歴史街道編集部編

空母を集中運用し、その艦上機を主兵力として艦船を攻撃する《航空主兵》。

空母は戦艦の補助的存在で、海戦の帰趨はあくまで戦艦の優劣によって決まるという“常識”があった。その“常識”を覆したのが、《航空主兵》による真珠湾攻撃だった。

南雲忠一司令長官率いる第一航空艦隊は正規空母6隻、艦上機350機をもって、米戦艦群を瞬く間に撃沈して見せた。これは、海戦における、作戦の革命だった。この作戦を主導したのが、山本五十六だった。

山本は、パイロット養成機関である霞ヶ浦航空隊教頭を皮切りに、航空本部技術部長、海軍航空本部長を歴任する中で、航空機のプロになった。それが、《航空主兵》の発想につながった。

山本五十六は、アメリカとの戦争に反対の立場を取っていた。それでも開戦となったとき、山本は連合艦隊司令長官の地位をかけて、真珠湾攻撃を主張した。

「開戦劈頭、敵主力艦隊を猛襲、撃破して、米海軍および米国民をして、救うべからざる程度にその士気を阻喪せしむる」と、主力艦隊を壊滅させて、それをもとに講和を図るしかないという作戦だった。

真珠湾攻撃は成功と言われるが、主力艦隊を壊滅させることは出来なかった。たしかに米太平洋艦隊の動きは封じた。日本はその間に、戦略的に価値の低い南方の島を大量に占領していく。山本に対して好意的に、広域の領土を占領しておいて、それを早期講話の外交カードにしたかったのではないかという捉え方もある。

しかし、真珠湾攻撃で講和を引き出すことは出来てないし、南方の島々の占領は、戦線を拡大して自ら墓穴を掘ってしまっている。

真珠湾攻撃の際、第二航空戦隊を指揮する山口多聞が、アメリカの戦艦群に打撃を与えた後、さらに海軍工廠や燃料タンクなど、陸上施設への攻撃を南雲司令部に意見具申した。しかし、南雲司令部はこれを黙殺して帰途についている。

山口多聞は、緒戦のハワイ作戦で、日本海軍の総力を挙げて米海軍を叩かなければならないと考えていた。山本五十六もそうだったはずだが、山本の作戦に懐疑的な南雲忠一に司令官を任せてしまっている。真珠湾攻撃の許可を得るための引き換えだったというが。

陸上施設を破壊し、体制が整わないうちに、真珠湾で沈めれなかったエンタープライズとレキシントンを叩き、陸軍を動員してハワイを占領するくらいまでやればよかった。そのくらい徹底的に出来ない体制であったのなら、真珠湾は無駄だった。



『太平洋戦争の名将たち』    歴史街道編集部編

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父祖たちが残した激闘の軌跡から、現代の我々が受け取るべきものとは。
第一章 山本五十六と真珠湾攻撃
第二章 山口多聞とミッドウェー海戦
第三章 角田覚治と南太平洋海戦
第四章 中川州男とペリリュー島の戦い
第五章 栗林忠道と硫黄島のサムライたち
第六章 今村均と日本の敗戦、責任の果たし方


真珠湾攻撃に日本の命運をかけるというのが本当の思いなら、山本五十六は南雲忠一を第一航空艦隊の司令長官にすべきではなかった。自分を支持する山口多聞を抜擢すべきだった。

山口ならば、海軍工廠や燃料タンクなど、陸上施設への攻撃を徹底したはず。そうすれば、エンタープライズもレキシントンも身動きが取れなくなる。米太平洋艦隊を沈黙させることができた。そこまで行けば陸軍を動かして、ハワイ攻略は難しいことではなかったはずだ。

山本五十六は、人事で甘さが出た。

ミッドウェー海戦の運命の判断。索敵機から「空母らしきもの」という連絡に、陸用爆弾に兵装転換中の空母艦上機に、再度、艦船攻撃用への兵装転換を急がせるという愚を犯す。この状況に山口多聞は「現装備のまま攻撃隊直ちに発進せしめるを至当と認む」と意見具申する。これを南雲司令部は、またも黙殺した。

・・・虎の子の空母4隻を失った。

その責任を、南雲司令部は誰も取っていない。司令部参謀長の草加龍之介は山本に、「敵を乗らせて下さい」と申し入れたという。山本は涙を浮かべて「わかった:」と応じたという。

日本海軍の総力をかけるといいながら、山本を乗せた大和は、この時ずっと後方に待機した。総力をかけるというなら、山本が乗った大和をおとりにして敵空母をおびき出せばよかった。この甘さが、敗因だ。

南雲忠一を司令長官として受け入れることは出来ないと突っぱねればよかった。山口多聞を司令長官に出来ないならと、真珠湾攻撃をやめるべきだった。蘭領インドシナを攻略し、最初の段階から絶対防空圏を設定し、小さく固まる手もあった。敵艦隊に長い遠征を強い、日本近海で壊滅的な打撃を与えることも出来た。

フランクリン・ディラノ・ルーズベルト米大統領は、ヨーロッパの戦争に参戦することを熱望していた。そのためにもドイツと軍事同盟を結ぶ日本を追い込んだ。蘭領インドシナを攻略しただけでは、アメリカは日本との戦争を始められない。後付けと言われるかも知れないが、アメリカの弱みを見つければ、やり様はいくらでもあったということだ。

当初の冒険的な作戦である真珠湾攻撃を、勝っていながら、腰が引けて、徹底できなかった。

山本五十六は名将と呼ぶに値するんだろうか。



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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本


























































































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