子ども『習近平vs.中国人』 宮崎紀秀
何度か話に出したことがあるが、定時制高校に勤務しているときに、中国人の生徒を教えていたことがある。
彼の父親は、中国の瀋陽にいる。彼は母親と日本に来た。母親は、日本人の男の妻という立場で、日本に滞在していた。最初からわけの分からない話だが、彼は「へへへ」と笑って済ませていた。
“中国”が人口増加抑制を目的として始めた一人っ子政策の問題が、そろそろ深刻になって、問題化し始めた時期に生まれた子だった。
中国人には儒教の教え、特に孝の精神が染みついているから、祖先を祭る子孫を絶やすわけには行かないだろう。さらには、子どもを育てて老後に備えるという意識が強いんだそうだ。そうなると、家に男の子がいないというのは、ちょっとまずい状況ということになる。中国人は面子を大切にする。そんな中国人は、自分の家が、祖先を祭る跡継ぎを残せない家と見られることに、面子が立たないと感じるらしい。
私が定時制で教えていた、・・・SKくんとする・・・SKくんには、お姉さんがいた。一人っ子政策下、二人目三人目の子どもを持つというのは、いろいろな不都合があるはず。それをSKくんにぶつけてみると、「お姉さんは、だから、生まれたことになってない」と、軽く言っていた。そのくらいは、よくあることらしい。どうやら、学校にも行ってないらしかった。
日常生活でも、“お姉さん”とSKくんの関係は、私たちがよく知る姉弟のものとはだいぶ違うもののようだった。「男の子と女の子では、家族の扱いが違うのか」と聞いてみたら、それはもう「当たり前だよ」ということであった。
おやつをもらえるのは、SKくんだけで、お姉さんの分はないんだそうだ。SKくんが食べて、余ったらお姉さんも「食べられることがある」ってことだった。ご飯の時のおかずも、全然違うと言っていた。
この本では、そんな状況を《重男軽女》と言っている。
そんなこともあって、男の子は、両親や祖父母の過剰なまでの愛情を一身に受けて育つ。そして、とてつもなくわがままな子どもになる。そんなわがままな子どもたちは、《小皇帝》と呼ばれる。


親は、当然のように、子どもを学校に送り迎えするんだそうだ。下校時刻が近づくと、校門の外には、お迎えの親たちが鈴なりになるという。だけど、それは溺愛だけが理由ではないようだ。親たちは、我が子が誰かにさらわれないように、心配で学校まで送り迎えしてるんだという。
“中国”では子どもの誘拐が、とても多いようだ。
『中国統計年鑑』によれば、全国の警察が事件として取り上げ、捜査した婦女児童の誘拐売買案件は、2015年には9150件、2016年には7121件に上ったという。警察が「誘拐」として取り上げたものだけで、その数になるという。“中国”では、警察の都合によって、誘拐されたと訴え出ても警察に取り合ってもらえないことも珍しくないという。
“中国”の警察は、なにかと、そういうところが少なくないと、他でも読んだことがある。そのせいか、綿々とひそかに繰り替えさえてきた児童誘拐は、未解決事案も含め、どれほどの被害者がいるのか、全体像は分かっていない状況だという。
結局、「需要があるから」と考えるしかなくなる。
手口の一つに、産科医が出産に立ち会った嬰児を、死産だったとか、先天性の障害があったとか嘘をついて、嬰児の処理を親に承諾させていたんだという。
この産科医は、7人の嬰児を日本円で34万円から51万円あたりでブローカーに売り、嬰児はブローカーによって男の子のいない農家などに売られていた。
農家に販売される段階になると、子どもの値段はどのくらいになるのか。
誘拐された子どもが、無事、親の元に戻ってきたケースがある。販売価格の折り合いがつかず、交渉が長引いている間に保護されたんだという。その“折り合い”というのは、一体どれくらいのところで交渉されているのかというと、だいたい76万円から166万くらいのところらしい。
ブローカーの仕入れ価格の3倍あたりと言うことらしい。
SKくんは、ペルー人の友人と一緒に、強盗傷害事件の見張り役として逮捕され、だいぶ長く鑑別所のお世話になったりしていた。「せっかく、日本語も話せるようになったんだから、日中の間で、人のためになる仕事をしろよ」と、多くのことを大目に見て卒業させたけど、今はいったい何をしていることやら。
彼の父親は、中国の瀋陽にいる。彼は母親と日本に来た。母親は、日本人の男の妻という立場で、日本に滞在していた。最初からわけの分からない話だが、彼は「へへへ」と笑って済ませていた。
“中国”が人口増加抑制を目的として始めた一人っ子政策の問題が、そろそろ深刻になって、問題化し始めた時期に生まれた子だった。
中国人には儒教の教え、特に孝の精神が染みついているから、祖先を祭る子孫を絶やすわけには行かないだろう。さらには、子どもを育てて老後に備えるという意識が強いんだそうだ。そうなると、家に男の子がいないというのは、ちょっとまずい状況ということになる。中国人は面子を大切にする。そんな中国人は、自分の家が、祖先を祭る跡継ぎを残せない家と見られることに、面子が立たないと感じるらしい。
私が定時制で教えていた、・・・SKくんとする・・・SKくんには、お姉さんがいた。一人っ子政策下、二人目三人目の子どもを持つというのは、いろいろな不都合があるはず。それをSKくんにぶつけてみると、「お姉さんは、だから、生まれたことになってない」と、軽く言っていた。そのくらいは、よくあることらしい。どうやら、学校にも行ってないらしかった。
日常生活でも、“お姉さん”とSKくんの関係は、私たちがよく知る姉弟のものとはだいぶ違うもののようだった。「男の子と女の子では、家族の扱いが違うのか」と聞いてみたら、それはもう「当たり前だよ」ということであった。
おやつをもらえるのは、SKくんだけで、お姉さんの分はないんだそうだ。SKくんが食べて、余ったらお姉さんも「食べられることがある」ってことだった。ご飯の時のおかずも、全然違うと言っていた。
この本では、そんな状況を《重男軽女》と言っている。
そんなこともあって、男の子は、両親や祖父母の過剰なまでの愛情を一身に受けて育つ。そして、とてつもなくわがままな子どもになる。そんなわがままな子どもたちは、《小皇帝》と呼ばれる。
『習近平vs.中国人』 宮崎紀秀 新潮新書 ¥ 880 新型ウイルスは“アリの一穴”、問われるのは共産党統治の正当性だ! |
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親は、当然のように、子どもを学校に送り迎えするんだそうだ。下校時刻が近づくと、校門の外には、お迎えの親たちが鈴なりになるという。だけど、それは溺愛だけが理由ではないようだ。親たちは、我が子が誰かにさらわれないように、心配で学校まで送り迎えしてるんだという。
“中国”では子どもの誘拐が、とても多いようだ。
『中国統計年鑑』によれば、全国の警察が事件として取り上げ、捜査した婦女児童の誘拐売買案件は、2015年には9150件、2016年には7121件に上ったという。警察が「誘拐」として取り上げたものだけで、その数になるという。“中国”では、警察の都合によって、誘拐されたと訴え出ても警察に取り合ってもらえないことも珍しくないという。
“中国”の警察は、なにかと、そういうところが少なくないと、他でも読んだことがある。そのせいか、綿々とひそかに繰り替えさえてきた児童誘拐は、未解決事案も含め、どれほどの被害者がいるのか、全体像は分かっていない状況だという。
結局、「需要があるから」と考えるしかなくなる。
手口の一つに、産科医が出産に立ち会った嬰児を、死産だったとか、先天性の障害があったとか嘘をついて、嬰児の処理を親に承諾させていたんだという。
この産科医は、7人の嬰児を日本円で34万円から51万円あたりでブローカーに売り、嬰児はブローカーによって男の子のいない農家などに売られていた。
農家に販売される段階になると、子どもの値段はどのくらいになるのか。
誘拐された子どもが、無事、親の元に戻ってきたケースがある。販売価格の折り合いがつかず、交渉が長引いている間に保護されたんだという。その“折り合い”というのは、一体どれくらいのところで交渉されているのかというと、だいたい76万円から166万くらいのところらしい。
ブローカーの仕入れ価格の3倍あたりと言うことらしい。
SKくんは、ペルー人の友人と一緒に、強盗傷害事件の見張り役として逮捕され、だいぶ長く鑑別所のお世話になったりしていた。「せっかく、日本語も話せるようになったんだから、日中の間で、人のためになる仕事をしろよ」と、多くのことを大目に見て卒業させたけど、今はいったい何をしていることやら。
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