わいせつ教師『バカの国』 百田尚樹
一昨日の新聞に、わいせつ教師の記事が載ってた。
児童生徒らへのわいせつ行為やセクハラで、2019年度に処分をうけた公立小中高校と特別支援学校の教員は、273人だそうだ。18年度の282に次いで過去2番目の多さだという。
懲戒免職が153人、停職50人、減給16人、戒告9人、訓告45人だそうだ。
高校の教員を36年間やってたけど、その間、知っている教員で性的犯罪で懲戒免職処分になった人が、3人いる。2人は女性のパンツを盗んだところを、現行犯で逮捕された。もう一人は買春、相手は女子高校生だった。自分の学校じゃないけどね。
いずれも、真面目を絵に描いたような人で、それが知らされたときは、心底びっくりした。3人とも、仕事上、かなり大きなストレスを抱えていたに違いない環境にあった。
その人たちとはちょっと事情が違うけど、歪んだ性的指向の人間が教員の中に紛れ込んでいるとしたら、これは恐ろしい。以前、採用の立場の人に話を聞いたことがあるんだけど、採用試験の倍率が3倍を切ると、おそらく教員に向いていない人間を排除できなくなると言っていた。小中学校では、3倍は、とっくに切っているだろう。高校はどうなんだろう。
新聞の調査に応じた教育委員会の6割が、過去の“処分歴”の有無の明記を求めているんだそうだ。もちろん、採用、不採用の判断に使うためだろう。
“処分歴”って言うのは、一体、どの程度のことから書くことになってるんだろう。大学1年の時に、父親に、三鷹警察署にまで受け出しに来てもらったことがあるんだけど、あれも書くのかな。
まあ、仕事に関わることと言えば、わいせつ行為はすぐに思いつく。“過去のわいせつ行為の有無”っていうことなら、児童生徒を守り育てる教員になろうとする者のプライバシーの方が優先ってことはない。特に、幼い子へのわいせつ行為っていうのは、癖であり、病気だからね。実例から言ったって、何度も繰り返す。そう言えば盗みなんかもそうか。盗癖っていうからな。
実際、教育委員会が問題としているのは、“わいせつ行為”ってことのようだ。どうやら、三鷹警察署の件は、“処分歴”として申告しなくて済みそうだな。


時代が違うかも知れないが、教員に成り立ての頃は、非常に危険だった。
当時は、飲み会っていうのが頻繁にあって、たとえば、学年、分掌、教科の飲み会が、一つの学期の始めと終わりに必ずあった。それだけでも6回。3学期合わせて12回。学校全体の飲み会が、歓送迎会、忘年会、新年会、納め会の4回。幹事によっては、その中の一つが泊まりの旅行になったりする。その他に、組合の飲み会が学期に1回はあって、部活の顧問として、外部との付き合いの飲み会が年に2回。それだけでも20回を超える。
ストレスのたまる仕事だからね。女の人もよく飲み会に参加してたな。話を聞いて欲しいって人が多かったんだろう。
その他に、身近な人たちと、個人的に飲みに行くから、もの凄くよく飲んでた。お金も使った。だけど、そういう中で、いろいろな人から、その経験を聞き、それを自分の仕事に生かすことができた。
酒の上の失敗なら数限りないくらいあるけど、先輩教師との付き合いっていうのは、とてつもなく大きな財産になった。今の若い先生方は、先輩教師からいろいろな経験談を聞く機会が、本当に少ないって聞いている。
教員になったばかりの頃は、女生徒に持てたから、そのことでもたくさん忠告されていた。その言わんとするところは、ひとつ。「女子生徒には手を出すな」ということ。教頭からは、・・・酒の席での戯れ言混じりだけど、「同僚には手を出しても、生徒にはダメだ」と言われた。何かやろうにも、怖い先輩たちの目が光っていたしね。
私のために、弁当を作って持ってきちゃう生徒がいるし、昼休みになると、準備室に遊びに来てしまう。他の先生方の手前もあって、甚だ困った。
私がはじめて担任した生徒たちは、年齢が6歳しか違わない。それでいて、教える立場と教わるだから、生徒にとって教師は仰ぎ見る立場だ。実際、競争を勝ち抜いて教員になっている。憧れの対象として見てしまうことは、不自然ではない。そんな状況にいくつかの偶然が重なれば、あこがれはたやすく恋愛感情に変わる。10歳くらいの違いまでは、たやすく射程範囲になる。
今は知らないが、概して教員になる人間というのは、真面目な人が多かった。新米教師に成り立てで、恋愛経験が豊富な人はあまりいない。女子生徒に上気した瞳で見つめられて、教員の方もその気になっちゃったケースはいくらでもある。実際に、教員で、生徒と結婚する人は、身の回りを見回しても、数多くいた。
私にも、いくつかのアプローチがあった。何かと近寄ってくる女子生徒も少なくなかった。2年後に、今の連れ合いと結婚したら、そういう女子生徒たちが、蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。
そんな環境の学校という社会に、おかしな“癖”、あるいは病的な精神性を持つ者が入ってきたらどうなるか。“処分歴”も良いけど、今でも新任には指導教官がついていると思うんだけど、指導期間と教官の権限の強化も考えてみたらどうだろう。別に酒の席じゃなくてもいいけど、若い教員にどんどん口出しできる職場環境ってのも必要だろう。
それから、なにより必要なのは、教員って言う仕事をもっと魅力的なものにすることだな。仕事量も軽減してね。とにかく志望者を増やすことを考えるべきだ。採用試験の倍率を上げて、おかしな奴が入り込めないようにすることも考えるべきだ。
やめちゃった私が言うのもなんだけど、今の教員っていう仕事には、私は魅力を感じられない。
・・・“指導歴”のある教員って、若い奴とは限らないか。
児童生徒らへのわいせつ行為やセクハラで、2019年度に処分をうけた公立小中高校と特別支援学校の教員は、273人だそうだ。18年度の282に次いで過去2番目の多さだという。
懲戒免職が153人、停職50人、減給16人、戒告9人、訓告45人だそうだ。
高校の教員を36年間やってたけど、その間、知っている教員で性的犯罪で懲戒免職処分になった人が、3人いる。2人は女性のパンツを盗んだところを、現行犯で逮捕された。もう一人は買春、相手は女子高校生だった。自分の学校じゃないけどね。
いずれも、真面目を絵に描いたような人で、それが知らされたときは、心底びっくりした。3人とも、仕事上、かなり大きなストレスを抱えていたに違いない環境にあった。
その人たちとはちょっと事情が違うけど、歪んだ性的指向の人間が教員の中に紛れ込んでいるとしたら、これは恐ろしい。以前、採用の立場の人に話を聞いたことがあるんだけど、採用試験の倍率が3倍を切ると、おそらく教員に向いていない人間を排除できなくなると言っていた。小中学校では、3倍は、とっくに切っているだろう。高校はどうなんだろう。
新聞の調査に応じた教育委員会の6割が、過去の“処分歴”の有無の明記を求めているんだそうだ。もちろん、採用、不採用の判断に使うためだろう。
“処分歴”って言うのは、一体、どの程度のことから書くことになってるんだろう。大学1年の時に、父親に、三鷹警察署にまで受け出しに来てもらったことがあるんだけど、あれも書くのかな。
まあ、仕事に関わることと言えば、わいせつ行為はすぐに思いつく。“過去のわいせつ行為の有無”っていうことなら、児童生徒を守り育てる教員になろうとする者のプライバシーの方が優先ってことはない。特に、幼い子へのわいせつ行為っていうのは、癖であり、病気だからね。実例から言ったって、何度も繰り返す。そう言えば盗みなんかもそうか。盗癖っていうからな。
実際、教育委員会が問題としているのは、“わいせつ行為”ってことのようだ。どうやら、三鷹警察署の件は、“処分歴”として申告しなくて済みそうだな。
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時代が違うかも知れないが、教員に成り立ての頃は、非常に危険だった。
当時は、飲み会っていうのが頻繁にあって、たとえば、学年、分掌、教科の飲み会が、一つの学期の始めと終わりに必ずあった。それだけでも6回。3学期合わせて12回。学校全体の飲み会が、歓送迎会、忘年会、新年会、納め会の4回。幹事によっては、その中の一つが泊まりの旅行になったりする。その他に、組合の飲み会が学期に1回はあって、部活の顧問として、外部との付き合いの飲み会が年に2回。それだけでも20回を超える。
ストレスのたまる仕事だからね。女の人もよく飲み会に参加してたな。話を聞いて欲しいって人が多かったんだろう。
その他に、身近な人たちと、個人的に飲みに行くから、もの凄くよく飲んでた。お金も使った。だけど、そういう中で、いろいろな人から、その経験を聞き、それを自分の仕事に生かすことができた。
酒の上の失敗なら数限りないくらいあるけど、先輩教師との付き合いっていうのは、とてつもなく大きな財産になった。今の若い先生方は、先輩教師からいろいろな経験談を聞く機会が、本当に少ないって聞いている。
教員になったばかりの頃は、女生徒に持てたから、そのことでもたくさん忠告されていた。その言わんとするところは、ひとつ。「女子生徒には手を出すな」ということ。教頭からは、・・・酒の席での戯れ言混じりだけど、「同僚には手を出しても、生徒にはダメだ」と言われた。何かやろうにも、怖い先輩たちの目が光っていたしね。
私のために、弁当を作って持ってきちゃう生徒がいるし、昼休みになると、準備室に遊びに来てしまう。他の先生方の手前もあって、甚だ困った。
私がはじめて担任した生徒たちは、年齢が6歳しか違わない。それでいて、教える立場と教わるだから、生徒にとって教師は仰ぎ見る立場だ。実際、競争を勝ち抜いて教員になっている。憧れの対象として見てしまうことは、不自然ではない。そんな状況にいくつかの偶然が重なれば、あこがれはたやすく恋愛感情に変わる。10歳くらいの違いまでは、たやすく射程範囲になる。
今は知らないが、概して教員になる人間というのは、真面目な人が多かった。新米教師に成り立てで、恋愛経験が豊富な人はあまりいない。女子生徒に上気した瞳で見つめられて、教員の方もその気になっちゃったケースはいくらでもある。実際に、教員で、生徒と結婚する人は、身の回りを見回しても、数多くいた。
私にも、いくつかのアプローチがあった。何かと近寄ってくる女子生徒も少なくなかった。2年後に、今の連れ合いと結婚したら、そういう女子生徒たちが、蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。
そんな環境の学校という社会に、おかしな“癖”、あるいは病的な精神性を持つ者が入ってきたらどうなるか。“処分歴”も良いけど、今でも新任には指導教官がついていると思うんだけど、指導期間と教官の権限の強化も考えてみたらどうだろう。別に酒の席じゃなくてもいいけど、若い教員にどんどん口出しできる職場環境ってのも必要だろう。
それから、なにより必要なのは、教員って言う仕事をもっと魅力的なものにすることだな。仕事量も軽減してね。とにかく志望者を増やすことを考えるべきだ。採用試験の倍率を上げて、おかしな奴が入り込めないようにすることも考えるべきだ。
やめちゃった私が言うのもなんだけど、今の教員っていう仕事には、私は魅力を感じられない。
・・・“指導歴”のある教員って、若い奴とは限らないか。
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