めんどくせぇことばかり 『くそじじいとくそばばあの日本史』 大塚ひかり
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『くそじじいとくそばばあの日本史』 大塚ひかり

この本を読んでいたら、連れ合いから、「え、そんな本読んでるの」って、いや~な目で見られた。

題名が嫌なんだそうだ。たしかに、私も躊躇した。

若い頃は電車に乗る機会が多かったし、喫茶店で読んだりしてたから、本にはカバーを掛けていた。今でも、もう少しいい気候になれば、公園のベンチで本を読むのもいい。だけど今は、人からどう思われてもいいので、本にカバーは掛けていない。それでも、この本を読んでいるところが、仮に人目に触れることがあるなら、やっぱりカバーを掛けたいな。

人目を引く赤い表紙、斜め上を指さすアクの強そうな老爺と老婆の絵、なにより「くそじじいとくそばばあ」って言う言葉。人に読んでいるところを見られたら、恥ずかしい。

高校の頃、口うるさい自分の母親に対して、「うるせえな、くそばばあ」って言っていた。そんな私にしてみれば、この本の中で《くそ爺婆》という言葉が繰り返されるたびに、今の私とさほど変わらない歳で亡くなった母に、申し訳なくて、申し訳なくて。自分の馬鹿さ加減が嫌になる。

だけど、そんな常識的なことを言っていては、この本で紹介されているくそ爺婆と、対等にやり合っていくことなんて到底できない。

この間、森喜朗さんの女性蔑視発言して居直って、二階さんが森さんをかばって“世間”から老害と叩かれた。「差別するなよ」って差別している人が多くいた。森さんが83歳で、二階さんが82歳、それでいて権力を握っているのだから、老害って言いたい気持ちも分からないではない。だけど、人の影から老害なんて差別してないで、同じ選挙区から立候補して、引きずり下ろせばいい。

だいたい陰口くらい叩かれたって、そんなことであの人たちが引っ込むと思う?平気の平左だよ。森さんは組織委員会会長を辞めたって、いくらでも影響力を行使できる。人の行動を、時には人生をも左右できる地位にあった彼らは、死ぬまでそうであろうとする。その力を失うことを、もっとも恐れる。彼らを退場させるのは、彼らの上をいくことしかない。

藤原道長・頼通の時代が、摂関政治の最盛期だと言われる。道長の遺言で、頼通は、いずれその座を弟の教通に譲ることになっていた。ところが頼通は、自分の子の師実に譲りたがっていた。それを教通に譲らせたのが、二人の姉である彰子であったという。

道長の娘である彰子は一条天皇の皇后であり、後一条天皇・後朱雀天皇の生母、さらには後冷泉天皇の祖母にあたる。当時は後冷泉天皇の代で、お婆ちゃんの影響力を駆使したわけだ。

で、ようやく頼通が教通に権力の地位を譲ったのが76歳の時。孫の代まで影響力を及ぼした彰子が亡くなったとき、教通は、政治を決定していく上で、「これからは誰に相談すればいいんだろう」と嘆いたそうだが、そのとき教通は79歳だったという。・・・彰子は87歳。やっぱり、“くそばばあ”かな。

天海僧正の政界デビューは81歳だそうだ。金地院崇伝との論争で表舞台に立ち、以降、崇伝に変わって幕政に関わっていく。108歳で死ぬまで宗教界のみならず、政界にも重きをなしたようだ。

108歳は、稀中の稀だろうが、この本に出てくる“くそ爺婆”は聖路加病院の日野原重明先生みたいな人がたくさん出てくる。藤原貞子は、歴史の中で言えば、南北朝分裂のもととなった後深草と亀山の、母方の祖母だそうだ。『増鏡』には貞子お婆ちゃんの“九十の賀”に関わる記述があるそうだ。この人は、そのあと17年も生きている。

昔から“くそ爺婆”は、確実にいたわけだ。




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貪欲に、したたかに、歴史を生き抜いた老人たち
はじめに くそ爺婆はかっこいい!
1 正史に残る最高齢者は「くそじじい」だった 
2 「ルポライターばばあ」が歴史を作る 
3 爺婆は最高の「歴史の証人」だ 
4 凄まじきは老人の権勢欲 
5 八十一で政界デビュー!! 百歳過ぎても政界に君臨 
6 一休さんはエロじじいだった 
7 平安・鎌倉時代のアンチエイジングばばあ 
8 戦国時代に「老人科」を作った老医師がいた 
9 昔もいた「迷惑じじい」 
10 西鶴の見たくそばばあたち 
11 昔話のおじいさんとおばあさんは意外と「いい人」が少ない
12 「鬼婆」の正体
13 前近代の8050問題? 『浦島太郎』の真実 
14 昔の人は短命はウソ!



本当かな。そんなに生きたのか。ちょっと、平均寿命の移り変わりを調べてみた。

縄文時代 15歳
弥生時代~古墳 30歳手前
飛鳥~平安 30歳くらい
鎌倉 24歳
室町 15歳
安土桃山 30代
江戸~大正 40歳くらい
昭和 31歳
平成 83歳

これを見ると、100歳を越える者が政治の場に影響してくるのは、平成で十分な気がするんだけどな。本当に100歳を超える人が、そんなにも歴史の中に出てくるんだろうか。

決定的な歴史的な文献が紹介されている。大宝律令の『令』には、「百歳以上の者に五人の介護者を与えよ」とされているんだそうだ。律令が定められた段階で、百歳を令に規定しなければならない状況にあったってことだ。

「なおいい国に」大宝律令は701年。「なんとりっぱな」平城京遷都が710年だから、律令ができたのは、まだ飛鳥時代。飛鳥時代の平均寿命が30歳くらいの時に100歳越えが本当にいたのかな。

江戸時代、成人の平均寿命は、すでにかなり高かったんだそうだ。ずっと昭和まで平均寿命が低いのは、乳幼児の死亡率が異常に高かったんだそうだ。
20歳過ぎまで生き延びた人の平均寿命は60歳近く、60過ぎまで生きた人になると、男女とも75歳くらいまでは行くんだそうだ。

私は昭和35年生まれだが、たしかに、自分が子どもだった頃、60くらいまで仕事をして、仕事を辞めてまもなく死ぬおじさんたちが近所にいたな。背戸のお婆ちゃんは88歳まで生きた。その葬式の時に家がボヤになって、葬儀の列席者に火を消してもらったんで憶えている。

だけど、皇族だったり、摂関家だったりするわけではない人々にとって、人生を生き抜くのは大変な事だった。知恵を尽くさなければ、まともな暮らしなんかできるわけはない。

「むかしむかし、あるところにおじいさんと、おばあさんがいました」と昔話が始まる。なぜ、“おじいさん、おばあさん”が主人公なんだろう。しかも、いい“おじいさん、おばあさん”はかえって稀で、あまりいいとは思えない“おじいさん、おばあさん”が多い。いい“おじいさん、おばあさん”は、悪い“おじいさん、おばあさん”の対照として出てくるくらいのもの。

一寸法師の“おじいさん、おばあさん”はいつまで経っても小さいままの一寸法師を、“化物風情”と疎ましがり、家から追い出す。竹取物語の“おじいさん”は「竹から生まれた“変化の人”でも身体は女」と、自分たちに楽をさせろと結婚を促す。

何とか子どもを育て上げても、貧しい時代にあっては身体の利かなくなる年寄りは足手まとい。ともすれば子や孫に邪魔にされる爺婆が生き抜くには財産を作らねばならず、それを子や孫からさえ守り通す必要がある。なによりも知恵が必要。人を疑う猜疑心を持ち、いいことはできる限り独り占めし、自分と財産を守るためには嘘だってつく。

そうやって、一所懸命に生きてきた爺婆への共感が、「むかしむかし、あるところにおじいさんと、おばあさんがいました」と語られるようになったのか。よく分かった。

ただ、本の装丁と、題名は変えてもらいたい。


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ジャンル : 本・雑誌

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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本






























































































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