めんどくせぇことばかり ソ連『人類の選択』 佐藤優
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ソ連『人類の選択』 佐藤優

二〇二〇年四月二四日に、プーチン大統領が「軍の栄誉を称える法律」の改正法案に署名した。この改正法案によって、「第二次世界大戦終結の日が、これまでの九月二日から、九月三日に変更された。

国際法的に第二次世界大戦が終結したのは、日本政府代表団が東京湾のミズーリ号上で降伏調印をした一九四五年九月二日ということになる。ポツダム宣言の受諾を八月一四日に連合国へ伝達し、一五日にはそれを国民に対して玉音放送で伝えた。これをもってソ連以外の連合国軍は、積極的な行動を停止した。

カムチャツカ半島に近い占守島では、武装解除に向けての準備を進める一方、北海道の第五方面軍からは「なお敵が戦闘をしかけて来たら、自衛のための戦闘は妨げず」との命令を受けていた。

ソ連軍の攻撃は一八日の未明に始まる。上陸したソ連軍部隊は、日本軍の激しい抵抗を受けることになる。一八日の午後には、日本軍側が有利に戦闘を進めるようになるが、第五方面軍司令官から、戦闘停止・自衛戦闘移行の命令があったため、第九一師団はそれに従い、一八日一六時をもって積極戦闘を停止することとした。

それでもソ連軍は戦闘を仕掛けてきた。すでに反撃行動を停止していた日本軍は、無用の損害を避けるため後退した。さすがに火事場泥棒の根性は汚い。

結局、占守島の戦いは、日本側から送られた軍使による交渉で停戦が進められることになる。それでもソ連軍は、何かと難癖をつけて攻撃をしかけ、撃退されるを繰り返す。最終的には二一日の夜に堤師団長が日本軍の降伏文書に調印し、二三日に武装解除が行なわれることになる。

もともと、武装解除の準備をしている日本軍に襲いかかって、ソ連軍は甚大な被害を出した。あるソ連側司令官は、後に「甚大な犠牲に見合わない、全く無駄な作戦だった。」と回顧録を残しているという。

占守島の戦いの最前線にいたのは、旭川第七師団編制の村上大隊と竹下大隊を主体とした四〇〇〇名。停戦後、武装解除された日本兵は、「日本帰国」とだまされて、最北のシベリアへ送られた。

スターリンは、当時有効だった日ソ中立条約に違反して日本に戦争をふっかけたわけだから、ソ連軍こそが侵略軍。八月八日宣戦布告した段階で、ポツダム宣言にも署名しているから、ソ連はそれを遵守する義務があったはず。呆れかえってものも言えない。


『人類の選択』    佐藤優

NHK出版新書  ¥ 935

ウイルスの感染拡大で、世界はいま、さまざまな局面で転換点を迎えている
序章 連帯か孤立か、独裁か自由民主主義か
第1章 感染症が国家の秩序を変えた
第2章 グローバリゼーションと感染症
第3章 新・帝国主義の再編成
第4章 人類の選択
終章 「選択の時代」の宗教・文学・哲学

だけど、守備隊の踏ん張りで、ソ連の千島列島侵攻は、大幅に遅れることになった。択捉島には八月二八日に侵攻、色丹島には九月の一日、国後島には九月二日、そして歯舞群島が九月三日となる。実際には歯舞群島の占領を完了するのは五日になる。ここで時間切れとなったわけだ。火事場泥棒終了。

だから、スターリンの時代は、九月三日が対日戦勝記念日だった。一九四五年九月二日、スターリンは国民に向けて、以下のようなラジオ演説をしたそうだ。

《一九〇四年の日露戦争での、ロシア軍隊の敗北は、国民の意識に重苦しい思い出を残した。この敗北は、我が国に汚点を残した。我が国民は、日本が粉砕され、汚点が一掃される日が来ることを信じ、そして待っていた。四〇年間、我々古い世代のものは、この日を待っていた。そして、ここにその日は訪れた。今日、日本は敗北を認め、無条件降伏文書に署名した。

このことは、南樺太と千島列島がソ連邦に移り、そして今後は、これがソ連邦を大洋から切り離す手段、我が極東に対する日本の攻撃基地としてではなく、我がソ連邦を大洋と直接結びつける手段、日本の侵略から我が国を防衛する基地として役立つようになるということを意味している》

ふざけた馬鹿野郎だな。ポツダム宣言受諾は日本の無条件降伏じゃないよ。日本軍の無条件降伏だ。だいたい、日露戦争の敗北は、お前たち革命屋が裏で足を引っ張ってたんだろ。いわば、ロマノフ朝が弱体化して革命が成功したのは、日本のおかげでもあるだろう。そういう話を聞くと、本当は革命そのものも、理念がどうのと言うのではなく、ただの権力闘争だったんだろうな。

まあ、スターリンの立場に立てば、対日戦勝は九月三日ということだ。ソ連の崩壊でスターリン主義から離れて、諸国に準じ、九月二日を第二次世界大戦終結の日としたロシアが、「軍の栄誉を称える法律」の改正法案で再び九月三日にしたと言うことは、スターリン主義への復帰という風にも取れる。

そんな国とは、領土交渉はやめよう。ロシアの国家運営には、常に危うさがある。「不法占拠をやめて、北方領土を返せ」といいつつ、好機を待とう。




    
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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本
































































































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