めんどくせぇことばかり 『最終飛行』 佐藤賢一
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『最終飛行』 佐藤賢一

だいたいフランスは、ただ負けていただけじゃないか。

そう、第二次世界大戦においてね。ただ、負けていただけのフランスが、戦後、United Nations、国際連合の常任理事国になり、拒否権を持ち、核保有国となった。ただ、誰よりも早く負けていただけのフランスが、まるで戦勝国家のように振る舞った。

フランスがドイツに大敗したあとロンドンに亡命政権を打ち立てたド・ゴールは、まさに徒手空拳と言っていい状態だった。英米から認められない“自由フランス”を率いて、ド・ゴールは傲慢なまでに連合国首脳と渡り合った。遂には、フランスに戦勝国としての地位を確保させ、最終的には、戦後、安全保障理事会の常任理事国入りも果たした功績は、非常に大きなものだ。

おっと、変なところから話を始めてしまった。

この『最終飛行』という本、私は佐藤賢一さんの書いたものだから読んだ。すぐに、サン・テグジュペリの半生を書いた物語であることは分かった。しかし、サン・テグジュペリに関する知識が、私にはなかった。高校の時に読んだ、『星の王子さま』の作者であること以外、何も知らなかった。

フランス陸軍飛行連隊に所属した兵士であったことも知らなかった。

第二次世界大戦に招集され、偵察飛行の実戦暦があることも知らなかった。

アメリカに渡って、アメリカ世論に訴えかけていたことも知らなかった。

アメリカで、『星の王子さま』を書いたことも知らなかった。

ヴィシー政権やド・ゴールの亡命政権から働きかけられるほど、政治的影響力を持った人であることも知らなかった。

ひどい、女たらしであることも知らなかった。



『最終飛行』    佐藤賢一

文藝春秋  ¥ 2,420

『星の王子さま』のサン・テグジュペリは作家であると同時に飛行機乗りでもあった
Ⅰ フランスは敗れる
Ⅱ アメリカに問う
Ⅲ ニューヨークの王子
Ⅳ アフリカへ、戦地へ
Ⅴ コルスを飛びたつ



高校の時に買った『星の王子さま』を、私はまだ持っていた。ちょっと、黄ばんでしまっていた。内容も忘れていたので、『最終飛行』の記述をもとに、ちょっとだけ読んでみた。

一つ目の、王様がたったひとりで住んでいる星の“王様”、家来もいないっていうのに「我こそ全宇宙の王だ」と王子に命令ばかりする“王様”というのは、ド・ゴールのことだったのか。

二つ目の星の大物気どりのうぬぼれや、三つ目の星の酒浸りの男、四つ目の星の実業家、いずれもよくありがちな人物で、もしかしたら、かなり分かりやすい具体的対象があったんだろう。中でも“たったひとりの王様”は、その当時の大人たちは、みんなド・ゴールのことと分かって読んだんじゃないだろうか。

それに、書かれた時代が第二次世界大戦中、自身も従軍したサン・テグジュペリが書いた子ども向けの本であるなら、当然、当時の世界が、物語の中に投影されていただろう。

ド・ゴールは、自由フランスを率いてヴィシー政権に戦いを挑んでいた。当然、フランス人同士の戦いとなる。それを意にも介さないド・ゴールも、ドイツのいいなりになるヴィシー政権も、サン・テグジュペリには受け入れられなかった。そんな想いも投影されているに違いない。

実は、ずいぶん読むのに時間がかかった。《Ⅰ フランスは敗れる》、《Ⅱアメリカに問う》を読み終えるまでに、時間がかかった。サン・テグジュペリの生き方がハチャメチャで、女たらしで、わがままな様子に辟易として、少し読んでは休み、少し読んでは休みという状態だった。

《Ⅲ ニューヨークの王子》になって、ようやく物語に入り込めた。《Ⅳ アフリカへ、戦地へ》《Ⅴ コルスを飛びたつ》は、一気に読んだ。読み終わって分かった。この本の題名は、『最終飛行』。佐藤賢一さんは、文字通り、サン・テグジュペリの“最終飛行”を書くことを目的に、この物語を書いた。

もし、前半部分で迷うことがあっても、しっかり読み進めてね。前半が味になって、後半がぐっと盛り上がるから。

サン・テグジュペリという人物は政治家ではもとよりなく、作家として知られた人物であるが、本人としては、なにより飛行機乗りだったんだろう。


戦後、オランダ領インドシナがインドネシアとして、フランス領インドシナがベトナムとして独立を勝ち取っていったことは、世界史の大きな転換点となっていった。

その時、日本軍に追い散らされていたフランス軍は、あらためて、かつてのフランス領インドシナに戻った。かつては神のように振る舞ったフランス人が日本軍に追い散らされる姿を目にしたベトナム人は、二度とフランス人の跪くことはなかった。

ベトナムが独立すると、その余波はアフリカに及ぶ。長い独立戦争の果てに、ド・ゴールは一九六二年にアルジェリアの独立を認めた。それと前後して、ギニア、モーリタニア、セネガル、マリ、コートジボワール、ニジェール、チャド、中央アフリカ、コンゴ、マダガスカルなどが次々と独立していく。

この過程に、すべてド・ゴールが関わっている。さぞかし、日本のことが嫌いだったろうな。

なんだか、名前を挙げてみると、独立後六〇年以上経った現在でも、さまざまな問題を抱えている国々ばかり。よっぽどフランスの支配が、とんでもないものだったんだろう。
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ジャンル : 本・雑誌

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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本


















































































































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