めんどくせぇことばかり 『秋霧』 大倉崇裕
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『秋霧』 大倉崇裕

《元特殊部隊員深江信二郎シリーズ》は、最初に『冬華』を読んだ。

『冬華』は、二〇二一年四月に出された本だった。《元特殊部隊員深江信二郎シリーズ》では、それが一番新しい本だった。そこから、シリーズ最初の本と思われる『凍雨』を読んだ。『凍雨』によって、深江信二郎がどんな人物であったか、ようやく分かった。その次に読んだのが、今日紹介する『秋霧』ということになる。

『凍雨』のあとに『秋霧』を読んだのは、間違いなかったようだ。なにしろ、『凍雨』で最後に仕留めた敵である遠藤が、深江に託した「マイという女」の話が出てきていた。

ただ、疑問が残る。

大倉崇裕さんが世に出した山岳ミステリーー、山岳アクションものには、『生還』、『聖域』、『凍雨』、『夏雷』、『秋霧』、『冬華』がある。それぞれ単行本が出されたのは、『聖域』二〇〇八年五月、『生還』二〇〇八年八月、『凍雨』二〇一二年三月、『夏雷』二〇一二年七月、『秋霧』二〇一七年七月、『冬華』二〇二一年四月という具合。

最初に読んだのが『冬華』で、今日紹介するのが『秋霧』、間に読んだ『凍雨』に春夏秋冬はないが、季節を思わせるのは同じ。《元特殊部隊員深江信二郎シリーズ》は、『凍雨』、『秋霧』、『冬華』で間違いないと思うんだけど、『凍雨』と『秋霧』の間に、『夏雷』という本がある。それはまた、違う話なのか、どうか。

今日紹介する『秋霧』に、月島で便利屋をやっている倉持という男が出てくる。その倉持が、北八ヶ岳の天狗岳に登り、その行程をビデオカメラに収めてくるという仕事を請け負う。それを商店街の顔なじみに話すと、「またかよ、忘れたわけじゃないだろ?槍ヶ岳の件」と言われている。

なんとも思わせぶりなセリフ。『凍雨』には、そんなエピソードはなかった。倉持という男も出てこない。気になるのは、『夏雷』。夏雷は、単行本も文庫本も、槍ヶ岳を表紙に使っている。『夏雷』は“月島で便利屋をやっている倉持”を中心にした話だったんだろうか。

この倉持について、今、確認した。最新刊にして、最初に読んだ『冬華』に、“月島で便利屋をやっている倉持”という男が、深江信二郎の相棒として出てきたいたんだ。

そうか。『凍雨』に始まる“元特殊部隊員深江信二郎シリーズ”に、『夏雷』に登場した“月島で便利屋をやっている倉持”が、『秋霧』から取り込まれていったんだ。

『秋霧』には山岳警備隊の原田、釜谷なんて名前も出てくるが、これらは『生還』の中の登場人物のようだ。大倉崇裕さんは、以前の本で作り上げた個性的な登場人物を、後の本にも効果的に登場させているわけだな。

面白いやり方だ。


『秋霧』    大倉崇裕

祥伝社文庫  ¥ 792

紅く燃える八ヶ岳に、三つ巴の火線が激しく交錯する、バディ・サスペンス傑作
序章
第一章 霧
第二章 監視
第三章 天狗岳
第四章 拉致
第五章 再会
第六章 供花
第七章 情報
第八章 狙撃
第九章 標的
第十章 秋霧
第十一章 約束
 


“山岳ミステリー”の、その“山岳”は、今回は八ヶ岳の天狗岳。ルートもはっきり指定されている。入山は稲子湯。一日目はみどり池を経由して本沢温泉に泊まる。行動時間は、通常ならば三時間四〇分ほど。楽な行程といっていい。二日目は、まず天狗岳を目指す。天狗岳は双耳峰。本沢温泉からなら、まずは東天狗に登り、続いて西天狗となる。その後、東天狗に戻り、黒百合ヒュッテ、中山峠を経て稲子湯に戻る。

このコースで深江信二郎は、おそらく自分と同等の能力を持つと思われる“霧”と対決することになる。ところが、これにもう一つのグループが絡んでくる。これがなかなか手強い相手。力量は少々劣っても、なにしろ組織されている。


「天狗岳に登ってきてくれんか」死期の迫った伝説的経営者上尾の依頼を受けた便利屋の倉持。山行の動画を撮る簡単な仕事のはずが、なぜか不審な影が。一方、元自衛隊特殊部隊員深江は、未解決殺人の対処に動く警視庁の儀藤に神出鬼没の殺し屋「霧」の追跡を依頼される。直後から何者かの襲撃を受け、奥多摩山中では凄惨な殺人現場に遭遇。その帰途、敵の車のカーナビに残っていた足跡を辿ると、目的地の病院で一人の男が拉致される現場を目撃する。直感に従い救出した男こそ、上尾にDVDを届けた倉持だった……。

どうやら、“霧”仕事の背景には、ある山での事故が関係していた。六年前、稲子湯からみどり池に向かってすぐに現れる唐沢橋の下で、男性の遺体が発見された。男性は何らかの理由で橋のたもとから河原に下りようとして足を滑らせ、転落したものと判断され、事件性のない事故死として決着していた。

しかし、この決着には当時、警察の内部においても、複雑な思いを抱く者たちがいた。それにもかかわらず、しっかりとした捜査が行なわれなかったのは、何かしら大きな力が働いていたということだ。

もう一つの組織的グループは、その“大きな力”に関わるものか。

このシリーズで参入してくる“月島で便利屋をやっている倉持という男”が、とてもいい味を出していて面白い。続きが読みたいところだが、上に書いたように、もう先に読んでしまった。・・・残念!


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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本


















































































































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